【外銀IBD選考対策】バリュエーションの基本・前編(市場株価平均法・類似企業比較法)
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こちらのシリーズでは、主に外資系投資銀行の投資銀行部門(IBD)の選考対策について特集します。
本記事では、IBD選考における重要なフェーズであるジョブ選考において用いるバリュエーション手法の中でも、市場株価平均法・類似企業比較法について、基本的な考え方を解説します。
バリュエーション手法の全体像
バリュエーションとは、株式や企業の価値・価格を算定することです。バリュエーションの手法は複数存在しますが、全体像は以下の通りです。

インカムアプローチ
実務において、案件の実行や検討段階において使用する腰を据えたバリュエーションで、最も重視される手法です。企業が将来的に生み出すキャッシュフローを推定し、これを元に現在価値を計算する手法になります。特に一般的な成長企業に対して用いられるDCF法は、会社によってはIBDジョブにおいても理解・使用を求められることがあります。IBDへの志望度が特に高い人や、M&Aチームへの配属を希望する人は押さえておく必要があるでしょう。
マーケットアプローチ
実務において、最もカジュアルかつ日常的に活用される手法です。その名の通り、マーケットデータを用いて、対象企業のバリュエーションを行います。
一般的なIBDジョブでのバリュエーションで、必ずと言ってよいほど使用を求められる手法です。概念を理解するだけでなく、自分で手を動かして使える状態になっておくことが理想です。
アセットアプローチ
保有資産を元にバリュエーションを行うアプローチであり、収益成長を見込めない成熟企業や衰退企業に適しています。ジョブで使用することは稀ですが、概念は理解しておきましょう。
本記事では、マーケットアプローチに区分される手法のうち、市場株価平均法・類似企業比較法について紹介します。
市場株価平均法
市場株価平均法は、その名の通り、対象企業の株価の終値を参照して買収株価を検討する手法です。基本的には、長期での価格変動を織り込むために、複数期間(1カ月平均・3カ月平均・6カ月平均・1年平均など)を参照します。株価の乱高下がある場合は、その原因を特定し、バリュエーションに織り込むかを検討する作業も必要です。
なお、派生として、出来高(売買数量)を織り込んだVWAPという手法も存在します。

類似企業比較法
類似企業比較法は、対象会社の類似企業のバリュエーションを参照する手法になります。例えば、以下の図のように、類似企業の収益予測値に対する企業価値の倍率を計算し、対象会社の収益予想値に同じ倍率を当てはめることで、想定企業価値を計算するといった形です。
この手法における主要な指標は、以下の図の通りです。特にジョブでは、EV/EBITDAとPERを使用することが求められることが多いでしょう。算出方法や指標の意味を理解の上で、ジョブ中に計算できるようにしておきましょう。
この計算は当期純利益や営業利益などへの理解が求められるので、このような財務項目になじみがなければ、別途会計の基礎を学習しておくのがよいでしょう。

このように、本記事ではバリュエーションにおけるマーケットアプローチ手法の概要を紹介しました。
次回の記事では、インカムアプローチであるDCF法についてご紹介します。
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