NRI(経営戦略コンサルティング部門)Project Story 03
自治体・様々な企業を巻き込み、プラットフォーム共創を実現する
PROFILE
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銀行、医療系ベンチャーのCOOを経て2010年にNRIに入社。オープンイノベーション、ビジネスインキュベーション、ベンチャー政策を専門に活動。近年は豊富な経験を活かし外部パートナー共創、顧客競争領域に進出。

EP1
矛盾を抱えながらのコンサル就活とファーストキャリア
学生時代は理工学、管理工学専攻で、就活時は社会システムにリーチできる仕事をしたいと思い、基本は日系コンサルティングファーム・シンクタンクを見ていました。選社軸は自分が考えたものを世に出したい・魅力的な先輩と働きたい・世の中を良くしたい・手触り感が欲しいということを考えていました。手触り感を挙げたのは「絵に描いた餅」を提供するコンサルタントとして偉そうに仕事にすることに違和感があり、三人称で仕事をするのはどうなんだろうという思いがあったからです。そのため、コンサルという仕事に対して矛盾がある中で就職活動をしていました。そんな中NRIの内定も頂きましたが、住友銀行のリクルーターから連絡があり、勉強のつもりで会ってみました。そうしたら銀行はお金というビジネスの酒肉になる部分を扱っている業種なので、お客様との関係性はそれこそ絵空事ではないと感じました。「銀行はとてもリアリティーのある業種だ」と言って頂いたおかげで、私の中のモヤモヤが解決して住友銀行に入りました。
最初は田園調布支店に配属になりました。その年は、投資信託を窓口で売ることが解禁された年で、銀行の新たなリテールビジネスの東日本のモデル支店でした。これがある種運命で、配属後リテールの専門家になりたいと思うようになりました。2年目にリテールの統括セクションに移動になり、それから銀行員時代はリテール一筋で、新商品、新規事業推進業務を担当しました。住友銀行では当時は若手が活躍できる土俵はそこまでなかったのですが、私は運が良く、2,000億円も集めた運用商品を私が主担当で開発したこともあり、2年目で各メディアから取材を受けるような経験もしました。楽しかったのですが、相場が悪くなって買って頂いたお客様に大損を出してしまって、各所に土下座して回ることが中心になっていきました。
EP2
金融業界から、手触り感を求めてベンチャー企業へ。廃業を経てそしてNRIへ
銀行での事業作りは面白かったですが、もう少し手触り感を持って自分で事業作りをしたいという思いが強くなりました。そこで、医療系のベンチャー企業にCOOとして飛び出すことにしました。医療系といっても専門的な医療機器ではなく、入院病棟のベッドサイド端末向けのカスタマイズコンテンツのサービスでした。この時代はスマホやタブレットはなくTVしか病棟にありませんでした。
この事業は残念ながら失敗に終わりました。個人的にカードローンを借りてそのお金を会社の資金にするということまでしていたので借金まみれになりまして、そんな中で子供が生まれました。これはいかんと思い、このベンチャー企業の廃業オペレーションまで行いました。
そして当時36歳の時に、ご縁があってNRIに中途入社しました。そこまでの社会人経験11年の中で、新規事業開発と事業の立ち上げしかやってきていなかったので、専門性といえば「頑張ることです」としか言えませんでした。にも関わらず当時の役員の方が「面白そうだから採用する」と言ってくださり今に至ります。前職の経験を活かして、今はオープンイノベーション・ビジネスインキュベーション・政府機関や自治体に対するイノベーション支援をテーマにしており、民4:官6程度の割合で案件に入っています。現在はクロスイノベーショングループという名前のグループを率いて、まさに様々な分野の掛け算に取り組んでいます。
EP3
価値観の根っこにある”掛け算のワクワク感”クロスイノベーションへの想い
私の人生観・職業間の根っこにあるものは、クロスイノベーションです。異質のモノ同士の掛け算で、新しいワクワクが生まれるということの面白さに突き動かされています。昔は意外性、NRIでは異彩融合と言われることが、いわゆるオープンイノベーションというブームになって、今はその進化系としてクロスイノベーションを世の中に普及させたいと思っております。
私は大学院の研究で自動車の部品製造における現場改善の研究をしていました。この研究は、普通は作業分析やライン設計を考えることが主流でした。しかし私は、作るべき部品を所与にしたままそれらを解くことは楽しいと思うことができず、その元となる設計段階の情報を取り入れながら構想をするプラットフォームを作りました。この共同研究を行っていた企業の役員の方に、「徳重さんの研究のおかげで設計部門と製造ライン部門が仲良しになれました。これが何よりの価値です」と言われました。この言葉によって、私がやったことは単なる工学的な効率化ではなく、人と人との対立の解決という成果を産んだということに、非常に感銘を受けました。この経験が、異質なモノ同士の掛け算の初めての原体験となりました。
そしてその後銀行に入り、投資信託商品をお客様に売ることが私の業務になりました。数学の分からないお客様に、投資信託のリスク理論のポートフォリオを説明しなければいけませんでした。これをどう説明するかを私なりに工夫しました。すると、数学が分からなくてもお客様に理解していただけるということを経験しました。これが私の2つ目の原体験となっています。
このように、異質なモノの対立構造や、その導入を経験してきました。
銀行時代は、他銀行との合併でいがみ合いなども発生しましたし、ベンチャー時代は病棟の高齢者の方とITの導入、NRIではコンサルティング部門とシステム部門の協働などもありました。今は、大学の研究者と中小企業のマッチングのようなテーマも扱っていて、アカデミアと民間企業のマッチングの大変さと面白さを感じています。また、NRIと顧客の関係が共同事業者という形に変化したり、NRIが顧客同士のマッチングをしたりするような場合もあります。このような掛け算の妙を活かしていこう、ということが私の行動の源泉です。

価値観の根っこにある”掛け算のワクワク感”クロスイノベーションへの想い
EP4
ビジネスコンサルタントから自身の想いを実現する「ビジネスプロデューサー」へ
イノベーションや事業創造のプロセスは、一般的にまず経営戦略があり、それに従った事業戦略があり、それが事業アイデアに落とし込まれ、サービスを設計して、デジタルで実際の物作りをし、リリースして事業化するという流れで進みます。この中の、事業アイデアから物作りについては、リーン&アジャイルと呼ばれるように、PDCAを何度も回す中でトライアンドエラーを繰り返して進めていきます。一昔前のNRIは、上流から下流まで、全てNRIができるということを強みとしてきました。これは嘘ではありませんが、それにこだわりすぎていて、本当に良いのかという疑問が出てきました。そして今は、NRI外のリソースも使うようになり、例えばUX(ユーザー・エクスペリエンス)などは専門家に委託するという取り組みが始まっています。しかし、まだバリューチェーンのうち大半はNRIが担当していて、そこがNRIの価値を担保しています。
ですが私自身の理想は、プロセスの大半は外部の専門家であるパートナーに委託する、商社のような形です。外部パートナーにケイパビリティを存分に発揮して頂き、NRIはその全体のプロデューサー機能を担うという形です。他のファームでは、デザインファームを取り込むことなどもしていますが、私はそうではなく、各バリューチェーンの流れの中で暗黙知になってしまう部分をしっかり管理するプロデューザーの役割を、NRIが担う形を理想としています。これが、私がビジネスコンサルタントでありビジネスプロデューサー集団になっていきたいと考える理由です。
私のチームでは、多様なプロフェッショナルを囲う取り組みを進めています。多様なプロフェッショナルとは、NRIのコンサルタントやエンジニアの他に、外部のデザインファームやDXファーム、アカデミア、VC、事業立ち上げ経験者などです。実際に、外部の事業を立ち上げたプロフェッショナルの方に、半年間伴走していただくこともありました。

ビジネスコンサルタントから自身の想いを実現する「ビジネスプロデューサー」へ
EP5
デザインファームとの連携
外部ケイパビリティ活用の一環で、昨年NRIはデザインファームのhyphenateと業務提携しました。hyphenateの強みはプロダクトデザインで、社長の平田さんも元々ブリヂストンやキャノンにいた方です。そのため、かっこいいカメラ、機能的なカメラ、そして構造的にそれをどう実現させるかをデザインすることなどを長年されてきました。そして最近は、モノからコトに価値が移行していく中で、UXデザインや企業のブランディングも行っています。
NRIは、コンサルティング部門もシステム部門もお客様の支援者たる存在で、事業を行う上での経営戦略予算・事業企画予算がコンサルビジネスの源泉、それを実装するためのデジタルシステム・IT予算がシステム部隊の源泉です。しかし一方、最近のバリューチェーンを見ると、戦略・デザイン・デジタルはPoCを回しながら事業を作っていくことが一般的となっています。このデザインの部分は今までNRIは落としてしまっていました。広告代理店やブランディング企業が担っていた部分です。
ここをNRIが取りに行くために、デザインファームとの連携が必要であるということになりました。上流がコンサル、下流がエンジニアリングとすると、その間を繋ぎ、なおかつ最初から最後まで伴走する役割を、デザイナーの方に担ってもらうことが肝になります。一貫して伴走していないと、この役割は難しく、都度外部委託するのではうまくいきません。そのため、このように業務提携をしてお付き合いすることになりました。現在、常時5、6本のプロジェクトを一緒に進めています。
事例の一つとして、スケジュール調整チャットボットの開発がありました。スケジュール調整は、実際に私もかなり時間をかけています。毎日6本ほどのミーティングを週5日行うので、その日時の調整だけでも結構な業務になります。そこで、バーチャル秘書というチャットボット形式で、簡単にAIがリコメンドして管理するサービスをお客様が検討していました。このプロジェクトにデザイナーの方が入ったとき、チャットボットの人格を問われました。言われたことをクイックに処理する指示待ちの人格なのか、ある程度先回りして動く人格なのかということでした。
今回の場合は、指示待ちではなく、ある程度お節介に先回りする方が良い。そうすると、画面のデザイン、配色などもガラリと変わる。人格を先に定めることで、機能やデザインが決まるという、ある種論理的なプロセスでした。我々コンサルタントがお客様に、AIの人格をどうするかという切り口で聞くことはこれまでなかったので、デザインファームとの連携は価値があるという確信に変わりました。
EP6
自治体・様々な企業を巻き込み、プラットフォーム共創を実現する
我々はプラットフォーム共創にも取り組んでいます。これは三菱地所が行っている東京マルチイノベーションプラットフォームというプロジェクトで、ある地区を実証実験の場所として、街のDXを考えるプラットフォームにするという取り組みです。そこにNRIはアドバイザーでありパートナーとして参加しています。
我々は民間のお客様をこのプロジェクトに参加を促すこともできますし、官公庁の政策のキーマンを連れてくることもしています。これによって、様々な実証実験を行う上での規制の融通を図ることができます。一社では解決できない社会課題の解決をする、1サポーターとして参加しています。
これを自治体でも行っていて、広島県のひろしまサンドボックスという取り組みを行っています。これは広島県を一つのプラットフォームとして、様々な企業が共創プロジェクトを行なうものです。例えば宮島という観光地は人気ですが小さく、混雑して密になるという問題があります。そこで、宮島全体の混雑情報をアプリで可視化して、行こうとしている人に情報を伝えて快適な観光ができるようにするアプリをスタートアップ企業・NTT西日本・JR西日本・広島県が作り、そのビジネス展開の支援をNRIが担当しました。
今はNRIが活動する資金を広島県から貰っていますが、自治体のプロジェクトは3年で終わるので、その後もこの取り組みを続けていくために、民間企業をマルチスポンサーにしながら民間で自走する仕組み作りを今は仕掛けています。
EP7
NRIが今目指すもの「社会課題とビジネスを両立させる新しいビジネスモデルの創出
このように今回は、普通のビジネスモデルとは違う、少し変わったプロジェクトについてお話ししました。
私がお伝えしたかったことは、価値共創という言葉は絵空事に聞こえてしまいますが、実際にそうではなく、リアリティーを持って行っていることがあることです。その中身としては、一つは積極的な外部パートナー連携をして、NRIはビジネスプロデューサーになるということです。もう一つは、プラットフォームでの共創として複数のプレイヤーが集い、NRIとしてはさらにそこから新しいビジネスモデルにチャレンジしていきたいと思います。
現在、NRIの600人のコンサルタントは全員、社会課題とビジネスを両立させる新しいビジネスモデルの創出に対峙しています。これに面白そうと思っていただいた方、是非ご一緒に働きましょう。