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経営共創基盤 IGPI 白熱教室 2nd グループ会長 冨山氏講演

経営共創基盤 IGPI 白熱教室 2nd グループ会長 冨山氏講演

PROFILE
経営共創基盤(IGPI) 代表取締役CEO

冨山 和彦

新卒でボストンコンサルティンググループに入社後、コーポレートディレクション代表取締役を経て、産業再生機構に移る。その後、IGPIを設立し代表取締役CEOに就任。現在はパナソニックの社外取締役や政府の諮問機関員を務めながら、IGPIグループの会長として、IGPIグループを牽引。 東京大学法学部卒、在学中に司法試験合格。スタンフォード大学でMBA取得。
キャリア
企業研究
戦略コンサル
経営共創基盤 IGPI 白熱教室 2nd グループ会長 冨山氏講演

目次

EP1

変化の激しい時代の「正解のキャリア」とは何か?

自分のキャリア選択が正解か不正解かというのは、時間が経たないとわからないと思います。約40年前にBCGに入社した当時の私も私なりにいろんなことを考えていたのですが、私が思っていた仮説や思いを今から振り返ると、世の中が変わったことももちろんありますが、今と比べると、1/10ぐらいしかわかっていなかったと思います。 また、その後40年経って、今の私が100%わかっているかというと逆にそういう感じはなくて、おそらく私がさらに40年生きることができたら、40年後の私は、今の私を振り返って、1/10しかわかっていないと思うような気がします。 これは2つ理由があると思います。1つは、世の中のこと、例えば科学の世界はどんどん変わることが考えられると思います。正しいこと、あるいは新しいことが毎日見つかっていて、今日皆さんが習っている物理と科学の教科書、あるいは歴史の教科書も日ごろに変わっている。 実は私たちがわかった気になっていることというのは、実は元々人類全体で見ても少ないんです。自然から見れば、人間は無知蒙昧です。 だから当然、その一人一人の私たちが無知蒙昧なのは当然で、昔自分が書いたスライドなどは恥ずかしくて自分でも読んでいられないところがあって、そのときは自分で知る限りのことでわかっているつもりで考えるのですが、振り返ってみると、なんとも無知蒙昧であったなと痛感するわけです。 もう1つは、特にこの30年40年というのが、とりわけ変動の激しい時代になったというところです。以前の日本は高度経済成長期からずっと調子が良くて、Japan as No.1と言われるようになり、世界の時価総額ランキングtop10のうち7社が日本の会社で、日本の一人当たりGDPは世界大国アメリカと常に争っていた時代でした。現在の中国のような感じです。 同じことをやりながら、同じパターンで勝っていけるので、そういう時代はとても安定するんです。人間は愚かなもので、そういうふうに上手くいってしまうと、これがずっと続くようにと思うわけです。 その中で私は、そのままJapan as No.1で日本がいくのではないか、その中に上手く溶け込み乗っかれば自分の未来があると考えている感じと、嫌だけど歴史を振り返ると、そんなつもりだった1つの国や体制が残った試しがなく、やはりそうは上手くいかないのではないかという感じの半信半疑な状態でした。 その半信半疑な私は、東大法学部出身として、ある種保険をかけている部分がある一方で、就職に関しては少し変わった就職をしようかなと考えました。 当時は、外資投資銀行と言えば、当時のバンクオブアメリカ、コンサルで言えば、マッキンゼーとBCGだけでした。マッキンゼーが5人の採用で、BCGは1人だけでした。 当時人気だったのは、日本興業銀行、三菱銀行、野村證券、そんな感じでした。また事業会社で言えば、当時一番人気は日本航空でした。この辺りにいわゆる東大早慶といった一流大学の上位の人がみんな受けに行っていた、そんな状況でした。当然のことながら役人も人気で大蔵省、通産省というのは人気がありました。 何が言いたいのかというと、結果的にここ30年で大きく変化したということです。 ある種人間って学習して慣れる生き物なので、連続不連続の変わり目というのは結構きついです。そういう時代を生きてきた先輩としてアドバイスすると、ファーストキャリアって言い方・考え方をするのではなく、あえて毎回ラストキャリアだと思っても良いと思います。ラストキャリアだと思って取り組み続けることで、おそらく本当の何かが身につくと思います。 結局、未来のことは誰にもわからず、計画的に何かやってもそうはならないのが世の中の動きです。予想外のことが次から次へと起きちゃいます。そうするとむしろ大事なことは、これからの3年4年、今の目の前にある自分に与えられた責任やチャンス、機会、これを最後のものだと思ってやった方が良い。少なくとも私はそうやってきました。 その次のチャンスのドアが開いていったのは、その瞬間その瞬間、ガチで勝負に行っていたので、おそらくそれを色んな人が見ていて、ドアを開いていってくれたからだと思います。

EP2

コンフリクトにあって初めて自分の字を知る

自己分析ってまだ難しいでしょう。若いときは自分のことを実は知らないと思います。色んな人間とぶつかり合う局面が、まだ人生においてなかなかないと思います。コンフリクトがある状況で何かをまとめあげなきゃいけない場面は実は仕事でいっぱいあります。そういうときってストレスを感じるわけだし、嫌な思いもするし、あとやはり影響力を人に与えていかないと物事動いていかないと思います。 そういったことでとにかく四苦八苦する。マネジメントは特にそうで、正しいアルゴリズムを組んで全く正しいプログラムを走らせても、組織体はそうは動かない。企業の合理性と個人の合理性がぶつかったり、噛み合わなくなったりするときに、結局自分のことがわかるんです。 挫折した局面というのは、一番自分の自が出ます。やっぱりストレスがかかるあるいは負け戦になったときに自分の自が出ます。そのようなときに自分を知ることになります。 こういう時に真剣にやらないと、結局そこでも字が出ずに終わってしまう。だからこそ真剣にその瞬間に取り組んだ方がいいんです。 こういう不連続な時代は、毎回毎回学びがあるので、すごく良い環境に恵まれましたとか、恵まれませんでしたという人がいるのですが、後に言わせると、本人次第だと思います。

EP3

レファレンス社会における「インテグリティ」とは?

なぜ、日本の会社が社内終身年功型2倍とかに頼ってしまったのかというと、社内昇格が一番、情報の非対称性がないからです。経済学をやっている方はわかると思いますが、市場メカニズム的には情報の非対称性は取引の非効率性を生みやすいので、それに反発する形で内部労働市場というものが比較的発達してきたのです。 だけど、それでも1つの限界があって、その内部にいるプールの中でしかマッチングができないので、今みたいに変化が激しくなると、必ず転職市場の方が発達してくる。 今後ますますレファレンス社会になっていくのは間違いないと思います。 レファレンス社会において一番大事なポイントはインテグリティです。 要は人間として信用がおけるのか。仕事に関するプロフェッショナルもそうですし、人間としての基本的な根本的な倫理性がどうかということです。 そのインテグリティがどこに見られるかというと、やはりその毎度の局面で、誠実に全力を尽くすかどうかです。これが基本だと思います。 一見その場その場で要領よく、悪びれず賢く振舞っている人は意外に長い持続性、サステナビリティがないと思います。 結局、インテグリティを大事にしながら誠心誠意やっている人間に、機会が与えられ、結果的に成長できると思います。

EP4

真剣勝負をし続けるには?

真剣な勝負をし続けるには、エネルギーを使いつくすのではなく、オンオフをつけながら働くことが重要だと思います。不安だから頑張りすぎてしまうと思うのですが、非認知的能力(共感力や直観力)、要はファクトロジックで説明できない能力って人間関係を作ったり組織をマネジメントしたりするために大事で、こういうものは大体遊びから身につけるものだと思います。 だから仕事の局面で必死になって一生懸命にやる、あるいは家族のこと、恋愛のこと、趣味のこと、それぞれ一生懸命やることがすべて活きてくるので、切替えながらやり続けた方が良いと思います。

EP5

自分の軸の見つけ方、多様な幸せのモデルを認める「プラグマティズム」

分の中でこうでなくてはいけないという軸は意外とないのですが、一つ言えばプラグマティズムに忠実ではあると思います。要するに現実的にワークするかしないのかを見極めるということです。 プラグマティズムにこだわりを持っているので、逆に言えばプラグマティックではない議論は嫌いです。要は、その気持ちはわかるがどうやって実現するのかが良くわかっていない議論は嫌いです。 ただ、プラグマティズムというのは、「何をもってよしとするのか」という一つの危険性をはらんでいます。私はこれを、それぞれの人の立場に立って、みんな概ね愉快に人生を送れるかということだと考えています。 愉快な人生を送るにはいくつか条件があります。 まずは、お金がなくてはいけない。やはり貧しいとつらいと思います。一方大金持ちでも、身内の争いで不愉快に失敗することが多くなるので、やはりこれもつらいと思います。 心身共に健康であるには、愉快であるには、多様な幸せのモデルを認めることが大事だと思います。特に日本は、昭和まで年功序列、エリート街道のようなモデルの一種類しかなかったと思います。最近になってようやく、ベンチャーなどの生き方も認められてきた。日本の会社はもっといろいろあった方が良いと思いますし、それこそカラフルな社会を目指すべきだと思います。 幸せのモデルが一種類だと、色々な人に対して役に立つというプラグマティズムからずれてしまいます。色々なモデルを認めないと、すぐにまたメイドインジャパンの工業国ですみたいなことをはじめてしまいます。 そうなると、予想通り、みんながみんな幸せになることは不可能になってしまう。これは私の軸、プラグマティズムから外れることを意味します。 だから私は、色々な幸せのモデルを認めて、皆が愉快に人生を過ごせるようになるためにプラグマティズムを追求しています。