【Alternative Careers/Internships|社会人講師インタビュー】 「コンプレックスより構造化」——外資戦略コンサルティングファーム出身講師が語る、キャリアと“育てたくなる人”の条件
本シリーズでは、Alternative Careers/Internshipsの講師陣が、ご自身のキャリア、企業選びの軸、実際の仕事を通して得た実感、そして学生へのアドバイスをご紹介します。 今の就活生と同じように、悩み、考え、意思決定をし、実際に働く中で、彼らが今何を考えているのか?一般的な就職情報サイトでは得られない、リアルな声をお届けします。 この紹介文は概略です。詳細については、ぜひ講座にご参加いただき、直接お聞きください。 就活サイトやSNSで「外資コンサル」「MBB」という言葉を見かけても、 実際にそこで働いていた人が何を考え、なぜその後のキャリアで別の道を選ぶのかまでは、なかなか見えてきません。 今回お話を伺ったのは、外資系の戦略コンサルティングファームで4年間働いたあと、 現在はAI系のスタートアップでマネジメントや横断プロジェクトを担いながら、 オルタナでビジネスプロフェッショナル講座やジョブ講座、転職志望者対象戦略コンサル講座等を担当している講師の方です。 10年以上オルタナと関わり続けてきた背景には、「コンプレックスを消してくれたファーストキャリア」と 「倫理や人間性への興味」という、少し意外な組み合わせの価値観がありました。
PROFILE
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Bさん

EP1
経歴と現在の業務
外資系戦略ファーム出身。現在はオルタナでBP(ビジネスプロフェッショナル)講座や、ケース対策講座を主に担当しています。
もともとは、いわゆる「スーパーエリート学生」という感じではありませんでした。
学部時代は都内の国立大学で理系の学科に所属していて、研究とサークルを行ったり来たりしながら、
「自分はどこに行くんだろうな」とぼんやり考えているタイプでした。
当時の自己認識としては、「めちゃくちゃ優秀というわけではないし、大企業でトライディショナルに働く自分もあまりイメージできない」。
どちらかというと、ベンチャー企業で少人数の中で動き回るほうが合っているのかな……と何となく思っていました。
ただ、それすらも確信が持てず、就活初期はかなり迷走していたと思います。
転機になったのは、とある人材系企業が主催していたインターンでした。
ワークショップ形式でビジネス課題を解いて発表するプログラムで、
そこにゲストとして来ていた社会人の一人が、今のオルタナ代表とつながっている人だったんです。
その場で思い切りボコボコにされた(笑)のですが、「ちゃんと構造化して考えれば、もっと面白いことが言えるはずだよ」と言われたのが妙に刺さって。
そこからオルタナの存在を知り、講座に参加したり、メンターと話したりするようになりました。
最終的には、外資系の戦略コンサルティングファームに新卒で入社しました。そこでは約4年間、いわゆる「戦略案件」にどっぷり浸かることになります。
担当したのは、新規事業の立ち上げ戦略、 投資ファンド向けの事業デューデリジェンス(投資前の事業評価)など、業界もテーマもバラバラでした。
3〜4か月ごとにプロジェクトが変わり、そのたびに新しい業界の「構造」を短時間で理解しないといけない。当時はかなりしんどかったですが、振り返ると、ここで「何でも構造化して捉える癖」が徹底的に身につきました。
今はIT・SaaS系の事業会社で働いています。プロダクト開発とビジネス側の間に立って、上場準備に関わる全社プロジェクトのマネジメントや部署を横断した業務プロセスの改善などを担当しています。
EP2
就職活動の振り返り
就活をしていた当時の私は、かなり迷っていました。
先ほどお伝えしたように、「ベンチャー企業とかのほうが合うのかな」という感覚はありつつ、そもそも自分を「特別優秀な人材」とは思っていなかったので、戦略コンサルのような場所は「自分とは違う世界」だろうと、どこかで勝手に線を引いていたところがあります。
そんな状態で就活を始めたので、最初は当然うまくいきません。
総合商社、ベンチャー、大手IT、戦略コンサル……と手広くエントリーはするものの、
グループディスカッションで空回りしたり、面接で何を話したいのか自分でもよくわからなくなったり。
「なんとなく頭は使っているけれど、相手に伝わる形にはなっていない」という感じでした。
そこで一度、「そもそも自分は何を軸に会社を選びたいのか」を真剣に考え直しました。
当時ノートに書き出していたのは、たしかこんな3つの軸です。
1. 再現性のあるスキルが身につくか
2. ブランド資本があるか
3. 一緒に働く人が尊敬できるか
この3つで見直してみたときに、「自分が勝手に線を引いていた戦略ファームも、ちゃんと受けてみたほうが良さそうだ」と感じました。
とはいえ、受けたからといってすぐ受かるわけではありません。特に序盤は、グループディスカッションやケース面接で苦戦しました。
たとえば、ある選抜イベントでは、「話している内容自体は悪くないけれど、構造が見えないから、結局何が言いたいのかわかりづらい」とフィードバックを受けました。
そこから意識的に変えたのは、何を話すかより先に「どう話すか」を設計することです。
実際の対策としては、コミュニティのメンターや友人にケースを出してもらい、自分の解き方を録音して後で聞き返したり、終わった後に「感想戦」をして、「別の人ならどう解くか」「なぜそのアプローチを取ったのか」を徹底的に比較しました。
最終的に戦略ファームから内定をいただいたとき、担当者の方から言われたのは「思考の回転が速いのと、チームの議論を前に進める姿勢が良かった」というフィードバックでした。
もう一つ、戦略ファームに入ってよかったと思うのは、変なコンプレックスが消えたことです。
就活中、「戦略コンサルに行きたいけど、自分なんかが行っていいのかな」と思っている人は多いと思います。
実際に中に入ってみると、もちろん優秀な人は多いですが、「人間として別次元」というわけではありません。
むしろ、普通に悩んで、普通に失敗している人たちが、構造化という武器で仕事をしているだけだと感じました。
高いレベルの環境に身を置くことで、「自分がダメだからできない」のではなく、「まだやり方を知らないだけだ」と思えるようになったのは、個人的には大きな収穫でした。
EP3
なぜ講師をやっているのか
講師を続ける理由は三つあります。
第一に、構造化や考え方の型が学生の“目からウロコ”になる瞬間に立ち会えると、自分の経験の意味を実感でき、自己肯定感が上がるからです。
第二に、前提・論点・選択肢・リスクに分解して考える力は本来もっと広く届くべきで、学校や社会では体系的に学ぶ機会が乏しいため、就活期に共有する社会的意義を強く感じています。
第三に、人をどう扱うかという倫理観への関心があり、戦略ファームで得た構造化と事業会社のマネジメントを土台に、オルタナで「構造」と「人間性」を同時に育む場づくりを続けたいからです。就活を軸に価値観に触れ、面接対策を超えた関わりが自分の学びにもなっています。
EP4
学生へのメッセージ
まず伝えたいのは、ファーストキャリアは「二の次」でも、ブランド資本は無視しないでほしいということです。最初から“やりたいこと”が明確でなくても、再現性のあるスキルが身につき、市場で通用するラベルが機能する環境を数年選ぶのは合理的です。外資系の戦略ファームのような場は、転職や挑戦時に最初のドアを開けやすくしてくれます。ただし、ブランドの目的化は禁物です。
また、「戦略コンサルや外銀は自分には無理だ」と外から決めつけるのはもったいない。中に入ると“特別な人だけの世界”ではないと分かり、自己肯定感が整う瞬間があります。
近年はAIの発展がめざましいので、資料のたたき台や定型分析はどんどん自動化されます。だからこそ、マネージャーが「それでも育てたい」と思う人になることが大切です。具体的には、学び続ける姿勢、任せたことを誠実にやり切る力、チームを前に進める言葉です。完璧でなくていい。「数年後の中核になりそう」と思わせる何かがあれば十分です。
「正解探し」より「納得できる選択」を。なぜその選択かを自分の言葉で説明できれば、違うと思ったときも構造的に立て直せます。キャリアは一発勝負ではありません。オルタナの講座で、そのための考え方と構造化の技術を一緒に磨いていきましょう。