【Alternative Careers/Internships|社会人講師インタビュー】 AI時代に「問いを立てる側」へ。外資戦略コンサル・Dさんが語る仕事とキャリア観
外資系の戦略コンサルティングファームで、ジュニア層として働いているDさん。 製造・金融・エネルギー・総合商社など幅広い業界で、中期経営計画や新規事業、M&A戦略に携わっています。 学生時代は「なんとなく良い大学には来たけれど、将来像はぼんやり」という状態だったと振り返ります。 そこからオルタナとの出会いをきっかけに視座が変わり、今は講師として就活生をサポートする立場にも立っています。 「AI時代だからこそ、問いを立てる力が大事になる」と語るHさんに、仕事とキャリアについて聞きました。
PROFILE
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Dさん

EP1
経歴と現在の業務
今は外資系の戦略コンサルティングファームで働いています。
いわゆるビジネスアナリスト相当の職位で、プロジェクトのかなり手前から関わります。
担当しているのは、論点分解・仮説構築・リサーチ・スライド作成・クライアント向けプレゼンまで一連の流れです。
論点分解というのは、「課題を細かい問いに分けて構造化すること」です。
仮説構築は、「おそらくこうなっているのでは?」という仮の答えを立てて検証していくプロセスです。
扱うテーマは、中期経営計画(会社の3〜5年の方向性を決める計画)や新規事業、M&A戦略・PMI(買収後の統合作業)などが多いです。
1日の流れとしては、午前中にチームミーティングで論点と今日のタスクを整理します。
その後、インタビューやデータ分析を進め、仮説を検証していきます。
午後はスライドに落とし込みながら、「どこまで言い切れるのか」「どこはまだ仮説なのか」を整理します。クライアント向けのミーティングがある日は、プレゼンを行い、その場でディスカッションすることも多いです。
学生時代は音楽系のサークルに所属し、カフェと塾講師のアルバイトをしていました。
1〜2年生の頃は「とりあえず勉強とサークル」という感覚で、将来像はあまり描けていませんでした。
2年の夏に選抜型の就活コミュニティ(オルタナのような場)を知り、
メンターがついたことで「社会やビジネスをもっとちゃんと知りたい」と思うようになりました。そこで出会った社会人の方々がきっかけで、戦略コンサルという仕事を意識し始めました。
EP2
就職活動の振り返り
就活を本格的に始めたのは、大学2年の終わり〜3年の頭でした。
最初は「給料が良さそう」「なんとなく華やかそう」といった表面的な理由で、総合商社や官公庁なども含めて幅広く見ていました。
そんな中で、戦略コンサルに軸足を置くようになったのは、「強い知的好奇心を持って物事を徹底的に追える人が向いている」と聞いたからです。自分は、わりと一つのテーマを深掘りしたくなるタイプで、3か月ごとにテーマが変わるプロジェクトのリズムも合いそうだと感じました。
就活では、戦略コンサルを中心に数社、総合商社と官公庁も少し受けました。今の会社から比較的早い段階で内定をいただき、「ここでやってみよう」と決めました。
ただ、その途中には当然うまくいかなかった選考もあります。特に序盤は、ケース面接で「正解」を探しにいってしまい、フレームワークをなぞることに必死で、自分なりの問いや仮説が弱かったと思います。
そこからは、自分の性格やこれまでの経験を言語化することに時間を使いました。
「なぜ構造化・抽象化・アナロジーが好きなのか」、「どんなときに一番集中できるのか」といったことを、ノートに書き出して整理しました。
その作業を通じて、「自分は問いをいじるのが好きなんだな」と気づき、戦略コンサルの仕事との接点が腑に落ちた感覚がありました。
今振り返ると、「業界研究の前に、自分研究をもっとしておけばよかった」と思います。
業界ごとの違いも大事ですが、「自分がどういう思考プロセスに快感を覚えるのか」を知っておくと、ファーストキャリアの選択がかなりクリアになるはずです。
EP3
なぜ講師をやっているのか
本業は戦略コンサルなので、プロジェクトの波によってはかなり忙しくなります。
それでもオルタナの講座やジョブに関わり続けているのは、大きく言うと「恩返し」と「場を広げたい」という二つの理由があります。
一つ目の恩返しについては、就活期に社会人講師の方々から本当に多くをいただいた実感があります。
ケース面接の解き方だけでなく、「そもそもキャリアをどう設計するか」という考え方まで含めてです。
当時の自分にとっては、大学の外にそうした“思考を鍛える場”があること自体が新鮮でした。
そのおかげで、戦略コンサルという選択肢にたどり着けたと思っています。
二つ目は、その「場」の存在をもっと広く知ってほしいからです。
知的好奇心や思考プロセスをとことん追求できる場があるのに、そこにアクセスできていない学生がまだまだ多いと感じます。
特に「いい大学には来たけれど、将来像はぼんやり」という人にこそ、一度この空気に触れてほしいと思っています。
私が担当しているのは、ケース面接の導入講座や「論点とは何か」を扱う初歩的な内容、
それから1日完結型のジョブ対策など、主に初学者〜エントリー層向けの部分です。
最初は「ケースって怖そう」と言っていた学生が、数週間でどんどん質問の質を上げていく姿を見ると、こちらも刺激をもらえます。
オルタナは、講師が一方的に教える場というより、世代を超えて一緒に考える「思考の道場」のような存在だと感じています。
EP4
学生へのメッセージ
戦略コンサルや外資金融を目指す学生に、今一番伝えたいのは「AI時代だからこそ、問いを立てる側に回ってほしい」ということです。
正直に言うと、ジュニアの仕事の一部はAIに置き換わっていく実感があります。
リサーチや資料作成、シンプルな分析は、すでにかなり効率化されています。昔は「インプットはAIでも、戦略は人間」と言われていましたが、最近は戦略の“草案”レベルもAIがある程度出せるようになってきました。
その中で人間に残る価値は、「どんな問いを立てるか」「どんな世界を実現したいかを描くこと」そして「ステークホルダーの思惑を踏まえた実装設計(ロードマップづくり)」だと思います。だからこそ、学生のうちから“答え合わせ”より“問いづくり”に時間を使ってほしいです。
具体的なアクションとしては、定番ですが『イシューからはじめよ』や『仮説思考』などの本を読み、実際のニュースや企業事例に自分なりの問いを立ててみることをおすすめします。
そして、ChatGPTのような生成AIは「使われる側」ではなく「使う側」としてフル活用してほしいです。
海外記事の要約をさせてみたり、ケースの対話練習相手になってもらったり、自分の答案とAIの答案を突き合わせて「何が違うのか」を考えるだけでも、思考の筋力はかなり鍛えられます。
向いている人のイメージをあえて言うなら、強い知的好奇心があって、構造化や抽象化のプロセスそのものを楽しめる人です。
逆に「正解がはっきりしているタスクを、丁寧にこなすのが一番好き」という人は、最初はしんどく感じるかもしれません。
ただ、それもやってみないとわからない部分なので、まずは小さな一歩として、コミュニティに飛び込んでみるのが良いと思います。
最後に、就活はどうしても「自分対企業」という構図に見えがちですが、実際には「自分と仲間でどんな問いに挑みたいか」を選ぶプロセスでもあります。
オルタナのような場をうまく使いながら、AIを手足にして、自分なりの問いを持ち続けてほしいです。
その問いこそが、これからのキャリアを形づくるコンパスになるはずです。